人気の高いS&P500連動商品が気になっていても、リスクが分からない内に投資するのは怖いですよね。
- S&P500は世界経済トップの米国の指数
- S&P500連動のインデックスファンドだけで資産運用は、一定のリスクがある
- リスクを許容できるならS&P500連動のインデックスファンドだけで資産運用は悪くない
- S&P500と全世界(オルカン)を両方運用するのも悪くない
投資の神様ウォーレンバフェットが、
「自分が他界したあとは、資産の90%をS&P500連動のインデックスファンドに投資してちょ」
と親族に提言した、というのは有名な話(ちなみに残りの10%は短期国債)
投資初心者やがっつり投資をやるつもりがないサラリーマンにとっても、S&P500だけで資産運用は悪くないと思っています
しかし信頼性の高いS&P500も、万能というわけではありません。
そのことを理解せずS&P500連動のインデックスファンドで投資を行うのはキケン。
この記事をざっと眺めておけば、S&P500の落とし穴について理解することができます。
専門用語は最小限にしてあるので、片手間にでもさくっと眺めていってくださいね。
S&P500連動のインデックスファンドだけで資産運用はやめとけと言う人の主張5選
いきなりですが、S&P500に連動するインデックスファンドのみへの投資を否定する方の主張を紹介します。
- 米国の市場が衰退したら詰む
- リターンがマイナスになる年もある
- 為替の影響で利益が安定しづらい
- 新興国や日本などが伸びても利益を享受できない
- 全世界株式のほうが手数料が安くリターンも安定
米国の市場が衰退したら詰む
こういった主張からS&P500だけに資産を投じるのは……
米国への集中投資となるため、リスクが高い
米国の経済が衰退する可能性は、0ではありません。
しかしそう簡単に、経済のトップという立場を他国に譲り渡すことも考えづらいです。
産業や人口、地理的な優位性も、米国の国力を支える大きな要素となっています。
上記のことから「米国の市場が衰退する可能性はそこまで大きくはない」
S&P500を資産運用の軸にしている人は、このような見方をする人が多いようです。
リターンがマイナスになる年もある
こちら、投資初心者にこそ聞いてほしい主張だったため、取り上げさせていただきました。
S&P500の過去30年の平均的な年利は、約10%。
しかしこれはあくまで平均値。
S&P500の事実……
- 大きくマイナスリターンとなった年が、実は意外と多い
※出典:myindex より
こちらの図は1961年~2021年までのS&P500のリターンを表した図です。
数えてみると、過去60年の間にマイナス側に棒グラフが伸びているのは18本。
つまり約3年に1回は、年間のリターンがマイナスとなっていた、ということです。
もちろん数字上はプラスリターンになる年の方が多いです。
しかし「年利〇%」という文句だけに注目して投資を始めると、毎年常に資産が増えると勘違いしがち。
S&P500は特に期待リターンが大きいことが注目されやすいので、投資初心者はこの落とし穴にはまらないよう注意しましょう。
為替の影響で利益が安定しづらい
こちらは為替リスクに関する懸念点を指摘した主張となります。
ざっくり為替リスクについて……
- 円/ドルの相場価格が変わることで、投資資産の価値も変化してしまう
たとえば1ドル=100円のとき、100円分の米国ファンドを購入した直後……
- 1ドル=150円に動いたら、ファンドの価値も150円に上がる(50%増)
- 1ドル=70円に動いたら、ファンドの価値も70円に下がる(30%減)
つまりS&P500連動のインデックスファンドを購入したあと、円の価値が上がったら資産価値は下がるということ。
ひとまず①と②みたいに為替相場が変わるだけで、利益に大きな影響が出ることを覚えていただけたらOKです。
※出典:Googleファイナンス より
上記のチャートは、ドルに対する円の相場を表したもの。
これだけ円の価値に振れ幅があるので、為替はリスクとなり得るのです。
一応、対策として……
- 為替リスクを避ける商品(為替ヘッジありの商品)を買う
- 円ではなくドルで投資商品を買う
方法もありますが……
- ムダなコストがかかりやすくなってしまう
- 普通のサラリーマンが実践するのは現実的ではない
今後、ドル/円の相場がどのように変化するのか、正確な予想は誰にもできません。
ただ裏を返せば、為替によって資産が期待以上に増えることも考えられます。
それに円の価値が異常に下がる前に、日銀がしっかり対策をしてくれるはずです。
為替は確かにリスク要素ではありますが、上手に付き合うことで見方にもなり得ることは覚えておくといいでしょう。
新興国や日本などが伸びても利益を享受できない
S&P500は米国の指標。他の国の企業が指標に組み込まれることはありません。
S&P500が米国の企業だけを投資対象としているため……
- 米国からの利益は最大限享受できる
- 新興国や米国以外の先進国(日本含む)からの利益には与れない
ところが、過去には米国以外の国が最大のリターンを出していた時期もありました。
※出典:Googleファイナンス より
過去5年だけでも、S&P500を超えてインドの指標がリターンを出していたことが分かるかと思います。
「リターンがマイナスになる年もある」の項目にも言えますが、S&P500は百戦錬磨の指標ではありません。
S&P500に過度な期待をしないため、常に最大のリターンとはならない点について、理解しておくことをおすすめします。
全世界株式のほうが手数料が安くリターンも安定
上記のような主張からS&P500ではなく全世界株式インデックスファンドに投資する人も多くいらっしゃいます。
全世界株式インデックスファンドは……
- その名のとおり、投資対象が全世界
- 投資対象には米国も含む(S&P500構成銘柄も多数存在)
世界中の国を投資対象にすることでリスクの分散性が優れている意見も、多く耳にしますね。
また長期投資家が着目しているのは、全世界株式インデックスファンドの手数料の安さ。
信託報酬(コスト) | |
eMAXIS Slim全世界株式 (オール・カントリー) |
0.05775% |
eMAXIS Slim米国株式 (S&P500) |
0.09372% |
※ちなみに日本の指標に連動を目指す「eMAXIS Slim国内株式(日経平均)」の信託報酬は0.143%
※いずれも2024年8月現在の信託報酬
S&P500連動の銘柄も十分コストは低いですが、全世界を投資対象にした銘柄のほうが低コスト。
これらの要素から、S&P500ではなく全世界をターゲットにしたインデックスファンドだけを運用する人は多いです。
S&P500連動のインデックスファンドだけで資産運用 肯定派の主張
ここまでS&P500否定派の意見をお届けしてきました。
今度はS&P500連動のインデックスファンドだけで資産運用を行っている、肯定派の意見を紹介します。
- 全世界に投資をしても大部分が米国に投資することになる
- 過去に年利約10.0%のリターンを出してきた実績がある
- S&P500組み入れ銘柄は定期的に見直され衰退しづらい
- 為替リスクを加味しても、日本のインデックスファンドよりリターンが◎
全世界に投資をしても大部分が米国に投資することになる
上記主張のとおり、全世界株式インデックスファンドの多くは、米国の比率を高く構成しています。
※出典:eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) 目論見書より
これは、指標が時価総額の大きな企業の影響を受けやすい仕組みを採用しているため起きる現象です。
(ざっくり)時価総額とは……
- 企業の発行している株の数 × 株の価格 で算出されるもの
- S&P500やオルカンが連動を目指す指数は、時価総額の大きな企業の影響を受けやすい
- そのため時価総額の大きな企業が多い米国が、構成比率上多くなってしまう
このような仕組みを「時価総額加重平均(株価指数)」なんて呼び方もします。
(ぼくは感じが多く苦手なのであまり呼びません)
話を戻すと、上記のような仕組みから全世界株式インデックスファンドも結局米国の投資比率が高いのは同じ。
人によっては全世界株式には経済が不安定な新興国も入っていることがマイナス要因と感じるかもしれません。
であればS&P500連動のインデックスファンドを選んだ方が、不純物がなく資産形成向きだという見方があります。
過去に年利約10.0%のリターンを出してきた実績がある
※出典:myindex より
グラフの緑の数値はS&P500の過去リターン。
20年~30年の長期投資をしてきた場合、年間約10.0%のリターンだったことが分かるかと思います。
もちろん過去のリターンは過去のリターン。未来のリターンを保証するものではありません。
それでも……
- 市場が破綻する可能性が少ない
- 比較的大きなリターンを産んでくれる市場
といった点で、S&P500が多くの投資家から期待されていることは間違いないでしょう。
それとS&P500否定派の主張紹介の際に言いましたが、S&P500は毎年プラスリターンを出してきたわけではありません。
この復活は、経済システムが盤石だからこそ。
投資の神様ウォーレン・バフェットが資産の9割をS&P500連動のインデックスファンドに入れろと言った理由も頷けます。
S&P500組み入れ銘柄は定期的に見直され衰退しづらい
S&P500の組み入れ銘柄は、四半期ごとに見直しをされています。
見直しによる変化例……
- 業績や財務の状況が悪い企業はS&P500の組み入れ銘柄から外される
- 時価総額の成長した企業と入れ替えが行われる
- 現在の状況に即した業界の企業を増やし、勢いのない業界の企業を減らす
このような入れ替えが定期的に行われることによって、S&P500は最新の市場動向が反映されやすくなっています。
物の価値が正しい価格で販売されれば、経済が安定します。
S&P500の銘柄入れ替えは、それを体現するための仕組みと言えるでしょう。
S&P500という市場は、安定感が高く衰退は想定しづらいため、NISAなどで長期投資する際にも人気となっています。
為替リスクを加味しても、日本のインデックスファンドよりリターンが◎
長期投資家の中には、日本の市場に対する期待感の低さから上記のような主張をされる方が一定数いらっしゃいます。
実際、ぼくも日本の指標は長期でリターンを産みづらいと感じている一人です。
※出典:Googleファイナンス より
こちらは日本の代表的な指標「日経平均株価」のチャート。
見てのとおりバブル期の90年代以降、低い位置をウロウロしているようなデータとなっています。
※出典:Googleファイナンス より
それに対してS&P500のチャートはこんな感じ。
アメリカ人で米国だけに投資する人は多いですが、日本人で日本だけに投資する人はあまり多くありません。
上記のチャートを比較することで、その理由がなんとなく分かるような気がしますね。
S&P500の基本情報
今更ですが、S&P500という指標の基本的なデータについて、ざっと紹介しておきます。
※2024年8月現在の情報をもとに作成したデータです。
①S&P500の概要
ちなみにS&P500の組み入れ銘柄は500社ではなく、実際は503社(2024年8月現在)
理由はGoogleなど複数の株式クラスを持つ企業がまぎれているためです。
(Googleは、アルファベットAとかCで銘柄構成されています)
②代表的な10銘柄
構成比率の上位10銘柄を、下記の表にまとめました。
構成銘柄 | 銘柄コード | セクター(業種) |
アップル | AAPL | 情報技術 |
マイクロソフト | MSFT | 情報技術 |
エヌビディア | NVDA | 情報技術 |
アマゾン | AMZN | 一般消費財・サービス |
メタプラットフォームズ(Class A) | META | 通信サービス |
アルファベット(A) | GOOGL | 通信サービス |
アルファベット(C) | GOOG | 通信サービス |
バークシャー・ハサウェイ(B) | BRK.B | 金融 |
ブロードコム | AVGO | 情報技術 |
テスラ | TSLA | 一般消費財・サービス |
これを見ると、セクター(業種)に偏りがあるのが気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
というわけで、その辺りもう少し掘り下げてみましょう。
③セクターの構成比率
セクター(業種) | 構成比率 |
情報技術 | 31.4% |
金融 | 13.1% |
ヘルスケア | 11.9% |
一般消費財・サービス | 10.0% |
通信サービス | 8.9% |
資本財・サービス | 8.4% |
生活必需品 | 5.8% |
エネルギー | 3.7% |
公益事業 | 2.4% |
不動産 | 2.3% |
素材 | 2.2% |
3月、6月、9月、12月の四半期ごとに銘柄入れ替えが行われるため、比率は時期によって多少変動します。
それでもやはり、情報技術の業種がS&P500の大きな割合を占めることは揺らがないでしょうね。
S&P500連動の商品にはどんなものがある?
S&P500はあくまで指数であって、投資商品ではありません。
そこで、S&P500の指標と同じ値動きを目指す商品について、いくつか紹介させていただきます。
投資商品 | 信託報酬・経費率(コスト) |
eMAXIS Slim 米国株式 (S&P500) |
0.09372% |
SBI・V・S&P500 インデックス・ファンド |
0.0938% |
楽天・S&P500インデックス・ファンド | 0.077% |
iFree S&P500インデックス | 0.198% |
バンガード・S&P 500 ETF(VOO) | 0.03% |
iシェアーズ・コア S&P 500 ETF(IVV) | 0.03% |
いずれもS&P500のような値動きをするため、長期的なつみたて・保有をすることで資産が増えることが期待されます。
ETFも投資信託と似たような商品で、投資信託と比較してコストが安い商品が多いです。
ただ少しクセもあります(ETFが気になる方は⇩記事も参考にしてみてください)
S&P500とオルカンを半分ずつつみたてるのはアリ?
米国への投資と全世界への投資、その二刀流はOKかという疑問ですね。
単刀直入に言うと、大きな問題はない
※出典:Yahoo!ファイナンス より
- 青線が「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」のチャート
- ピンクの線が「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」のチャート
S&P500とオルカンを半分ずつ投資する場合、リターンはこの間くらいとなる見込みです。
S&P500とオルカンを半分ずつつみたてるのがおすすめな人……
- 米国への投資は魅力的だけど、万が一の事態を想定している人
- 全世界株式の安定感は魅力的だけど、ある程度リスクをとってリターンも確保したい人
シンプルなポートフォリオをつくる観点だと、S&P500と全世界株式、どちらか一方で資産運用するのがいいです。
しかし投資を始めたばかりの人が「どちらをつみたてるのが自分にとって最適か」を見極めるのは困難。
であれば、自分がストレスを感じずらいバランスでS&P500とオルカンを両方つみたてるのも手です。
結論:S&P500連動のインデックスファンドだけ運用は、一定のリスクはあるが悪手ではない
ここまで午後の昼下がりにぴったりの駄文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
最後にこの記事の重要ポイントをプレイバック。
- S&P500は世界経済トップの米国の指数
- S&P500連動のインデックスファンドだけで資産運用は、一定のリスクがある
- リスクを許容できるならS&P500連動のインデックスファンドだけで資産運用は悪くない
- S&P500と全世界(オルカン)を両方運用するのも悪くない
S&P500連動のインデックスファンドだけで資産運用は、投資初心者やサラリーマンでも実践しやすいです。
ただしS&P500のいい面ばかり見ていると、挫折のもととなります。
紹介したとおり、S&P500は万能の指数ではありません。
そのことを理解した上で投資することで、誤った判断を防ぐことにつながるはずですよ。
それではまた!
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